~太平洋に吹く日本海の風~東京九州フェリー乗船記【すいせん】(2022/5/27)

【はまゆう】【それいゆ】に続く、もう一つの物語。

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就航日:2012年7月1日*1

(就航期間):2022年5月11日~6月10日*2

 

建造:三菱重工業長崎造船所(香焼工場)

 

総トン数:17,382t

 

全長:224.5m

 

全幅:26.0m

 

旅客定員:613名

 

車両積載台数:トラック158台、乗用車58台

 

航海速力:27.5ノット

 

【乗船日】2022年5月27日~28日

【乗船区間】新門司港→横須賀新港

小倉駅新幹線口のバス停、最早言うまでもない

連絡バスは定刻の22;10間近に到着。 周囲で待っていた乗船客を乗せて忙しなく出発します。 遅れていたとはいえ深夜の空いている道を進んで行くためフェリーターミナル自体には22:55頃とやや早めに到着しました。

送迎バス(西鉄バス北九州の車両)
西鉄のロゴの隣に東京九州フェリーのステッカーが貼られた

この日は祝日なども挟まない普通の週末の金曜日でしたが、シャトルバスの席はかなり埋まっているようにも見え、ターミナルには多くの自家用車も待機していました。

また、フェリーターミナルに向かう途中には運送業者など何台もの大型トレーラーとすれ違い、乗船待ちのトラックの台数も12月に乗船した時と比べると増えたようにも見えました。

【すいせん】
【はまゆう】【それいゆ】と比べるとかなりボリュームのある船体

充当船は【すいせん】。通常時は新日本海フェリー敦賀~苫小牧東航路(直行便)に就航していますが、本来の東京九州フェリーの2隻【はまゆう/それいゆ】が5月11日から6月10日にかけて年1回の定期検査(ドック入り)で1隻ずつ2週間で約1か月間離脱した状態となる為、その代船として期間限定で横須賀~新門司航路に就航しています。

多くの場合はドックに伴い1隻離脱する場合は担当する1便分が歯抜けの状態(=欠航)となる為、同じグループ内とはいえ会社を跨ぐような形での代船運航により便数を維持するという長距離フェリーではかなり珍しい形態をとっています。*3

船体の写真を撮った後ターミナル内へ。乗船券は前回横須賀から【はまゆう】に乗船した際に、「復路」と思われたのか一緒に発券されたものをそのまま持参しました。

 

ターミナル2階の待合室にはスタッフの方々が船上から撮影した写真が柱などに掲載されていました。

2F待合室に飾られていた写真

乗船開始時刻は23:10

予告通り23:10に乗船開始。乗船口前で改札後ボーディングブリッジを渡り船内へ入ります。

今回利用した個室は5F左舷側ステートA2段ベッド536号室。【はまゆう/それいゆ】には設置されていない客室種別で定員は4人、室内にはトイレと洗面所、机と冷蔵庫があり部屋の奥の左右にベッドが2つ、そして壁にプルマンベッド*4が2台と計4台のベッドが配置されています。

プルマンベッドを収納した状態

プルマンベッドを展開した状態

机と椅子、机の下には冷蔵庫と茶器の収納スペースが設けられている

冷蔵庫

水回り、トイレと洗面台が設置されているが【はまゆう/それいゆ】に設置されているシャワールームは無い

【はまゆう/それいゆ】では窓口で発券し乗船改札時に提示する「e乗船券お客さま控」に印字されたQRコードをそのまま船室の鍵として用いますが、【すいせん】では阪九フェリー等と同じくカードキーを個室の鍵として使用します。 なお、カードキーはターミナルの窓口では発行されず乗船後船内案内所での受け取りが必要です。

そして乗下船時の改札時には「e乗船券お客さま控え」の提示が必要な為こちらも下船時まで保管が必要となります。

カードキー、船室番号のみが記されたシンプルなもの
今回の代船航海の為に新たに東京九州フェリー仕様としてデザインされたカードキーはどこかアメリカン(? )なセンスを感じる

1枚目:e乗船券お客さま控とカードキー【すいせん】
2枚目:e乗船券お客さま控え(兼ルームキー)【はまゆう/それいゆ】
単純に発券枚数が減り管理が楽という面では後者に利があるが、単純なルームキーとしての使い勝手は後者に利がある

 

荷物を下ろし軽装に着替えた後船内を軽く探索します。 【はまゆう/それいゆ】に比べ全幅がやや広く、旅客定員が2倍以上多い分旅客スペースはかなり広くとられています。

そして、普段は北海道航路に充当されていることから船内掲示物や売店の取り扱い物品、自動販売機の飲料類などは日本海・太平洋両航路が入り乱れる不思議な空間と化していました。

3層吹き抜けのエントランスは円形ではなく四角形、中心には不思議なオブジェが聳える

5F右舷側にはプロムナードが広くとられている、軽食を提供するカフェも設置

自動販売機ではガラナ(北海道限定品)が取り扱われていた

船内旅客スペースは広くとられていますがその反面外部デッキは高速船故か5F最後尾の僅かな空間に限られており、【はまゆう/それいゆ】や瀬戸内海航路の大型フェリーと比べるとかなり狭く感じました。

定刻より5分早い23:50頃【すいせん】は離岸、新門司港を発ちます。

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【すいせん】でも【はまゆう/それいゆ】と同じくレストランの夜食営業が行われますが、今回も夜食は摂らず大浴場で入浴後就寝しました。

 

翌朝は5:00過ぎに目が覚め一度起床、エントランス周りの早朝の様子を収めることとし一度部屋をでます。軽く散策後部屋に戻り二度寝、そうは言っても一度動いており目が冴えていたため40分程でベッドをでました。

その後は室内備え付けのしおりを読むなどして8:00頃までゆっくりと過ごします。8:00にはこの日最初の船内放送が入りレストラン朝食営業・売店・大浴場の営業が開始され1日が始まります。

5:30過ぎに足摺岬付近を通過

【すいせん】のしおり、当然ながら[Shin Nihonkai]と記載されているも一部が東京九州フェリー仕様に差し替えられていた


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朝食を摂る為レストランへ。レストランは【はまゆう/それいゆ】と同じく自席でタブレット端末を用いて注文し、食後セルフレジで会計するという方式。セルフレジでは現金・クレジットカード決済が可能です。

レストラン「バッカス」にはプロムナードの奥から入る

パンとスープで軽めの朝食

朝食後は5F船体最前方のフォワードサロンへ。フォワードサロンの広さに関しては若干【はまゆう/それいゆ】の方が広いようにも感じましたが、エントランスから距離がある為か人の出入りは比較的少なくより静かで落ち着いた空間でした。

フォワードサロン「ポセイドン」

9:00過ぎに操舵室からの船長挨拶の後後部デッキへ。朝方は雲がやや多かったですがこの時間帯になると青空が広がります。そして10:15頃に紀伊半島沖で【はまゆう】と反航。デッキが狭いゆえかちょっと窮屈でしたが無事反航の様子を収めます。連休中に【それいゆ】を見た時と比べるとやや距離がある様にも感じました。

デッキから船尾が近い為航跡が良く見える

逆光気味になるのは致し方ないが、それでも最初の時よりは綺麗に撮れたような気がする

反航を見届けた後は2度目の入浴の為に大浴場へ。【はまゆう/それいゆ】をはじめ、ここ10年で就航したSHKライングループの大型フェリーに須らく設置されている露天風呂は【すいせん】と姉妹船の【すずらん】が史上初めての設置。どことなく年季を感じつつも変わらない心地よさでした。

11:30を回るとレストランの昼食営業が開始。湯上りだった為少し時間をおいた12:00過ぎに入店。メニューは東京九州フェリー仕様でほぼ変わりありませんがその中では数少ない【すいせん】のみ取り扱いの味噌バターコーンラーメンとミニカレーのセットを注文しました。

味噌バターコーンラーメン

ミニカレー

味が濃く如何にも重そうな組み合わせにも見えるが卒なく平らげることができた

明らかに「何か」があったセルフレジに至るまでのレストラン内通路。営業時間掲示等の位置関係的に前払いのカフェテリア方式からセルフオーダー&後払いセルフレジに変わった段階で店内の順路が逆転したものと思われる

食後に自動販売機でガラナを購入。その後は夕方まで売店を物色してみたり自室でBS放送と流れる景色を見ながらガラナを飲んだりとゆっくり過ごしていました。

売店
横須賀・福岡の土産は勿論のこと、日本海から流れてきた敦賀鯖缶舞鶴海軍カレー、秋田のいぶりがっこ、そして北海道の食品・土産に東京九州フェリーと新日本海フェリーのオリジナルグッズと太平洋に浮かぶセルフ物産展の様相を呈していた

子どもの頃憧れていた2段ベッドの上段側に陣取り眺める景色はとても新鮮で楽しい

東京九州フェリーでは【すいせん】でしか揃わないカードキー、ガラナ、御船印を並べる

何処までも青い海が広がる

16:30頃に3回目の入浴。17:00を過ぎると伊豆半島南端の石廊崎付近まで進みます。右手には伊豆諸島の神津島・新島・利島が見えてきます。

石廊崎付近

伊豆諸島と伊豆半島に挟まれた海域、この辺りになると周囲を行きかう船も増えてくる

17:00からはレストランの夕食営業が開始、17:30頃に入店。夕食はハンバーグとグラタン、そしてご飯としました。

ペンネマカロニと3種のチーズグラタン

東京九州フェリーオリジナルハンバーグ

ハンバーグは中々肉肉しいしっかりした味、グラタンも美味しかった

食事を摂った後外部デッキに出てみると見慣れた山体のシルエットが。富士山がその姿を見せます。12月に【それいゆ】から見た際は伊豆半島の西側の駿河湾から沈む夕日に照らされていく様子を見ましたが今回は富士山の左側へ夕日が沈んでいく様を見ることとなりました。また時を同じくして進行方向右側には伊豆諸島の北端にあたり最大の島となる伊豆大島が現れます。

伊豆大島

夕日は富士山の左側、伊豆半島の山群の向こうにゆっくりと沈んで行った
東行き航海のクライマックスであり、関東がすぐ近くであることを実感する瞬間

沈む夕日と富士山を眺めた後は部屋に戻り荷物を片付けて下船の準備をします。定刻まで1時間前になるとBGMが流れ出し、長い船旅の終わりが近づいていることを実感します。


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そして、【すいせん】は定刻よりやや早く横須賀港へ到着。各種車両の運転手と同乗者の下船が始まり、20;50頃に徒歩含む全乗船客の下船が開始。荷物と待機中自動販売機で最後に購入した缶のガラナを持ち、21時間の船旅は幕を閉じました。

横須賀フェリーターミナル、3度目となると見慣れた光景だがこの日乗ってきたのは普段と違う船

多くのトラックも下船。信号待ちの列も一時的に形成され、メインとなる物流面の利用も伸びてきている様子

横須賀中央から品川までは土休日ダイヤの京急線特急で1時間足らず、横浜や都区内へは10時過ぎにはたどり着けるのも大きな魅力

【はまゆう/それいゆ】、そして横須賀~新門司航路のある種モデルとなった敦賀~苫小牧航路から代船としてやってきた【すいせん】。より大きな船体に定員に見合う広いパブリックスペースを備え船室等級も多様で楽しい船でした。最初に乗ったのが【それいゆ】だったので船内の広さと大きさにややたじろいた面もあり、個人的には船内がコンパクトに纏まり展望デッキの広い【はまゆう/それいゆ】の方が快適に感じる面がありました。
レストラン・売店のセルフレジや露天風呂など【はまゆう/それいゆ】に続いていく先鞭をつけたある種姉貴分ともいえる【すいせん】。今年はあと1週間(執筆時点)で東京九州フェリーでの運航を終えますが、カフェやグリル、和室など今回利用できなかった設備もまだある為、また来年以降も顔を出してくれることを期待したいところです。





 

 






 



 

*1:新日本海フェリー敦賀~苫小牧航路直行便

*2:https://tqf.co.jp/cms/wp-content/uploads/2022/04/202205-07TQFschedule.pdf

*3:離島航路等では東海汽船の【さるびあ丸】(2020年就航、通常は東京~伊豆諸島北部の各島就航)が小笠原諸島の父島へ就航(同グループの小笠原海運【おがさわら丸】定期検査中のみ

「さるびあ丸」による東京~父島航路の代船運航について | 小笠原村公式サイト)に等で見られます

*4:使用しない際は壁に折り畳み収納できるベッド、使用時は付近に別途立て掛けてある梯子を使い昇降する